下駄と草履で代官の前に出た男
どんな伝承か
棚倉藩出張御陣屋の代官岡野先之進は、褒賞を与えようと出頭を命じた幸右衛門の姿を見て驚いた。右足に下駄、左足に草履という片ちんばの姿で、しずしずと入って来たからである。咎めると、今朝出がけに父は天気が悪くなるから下駄で行けといい、母は天気がよくなるから草履をはけといって二人とも譲らず、親の命に背くのは親不孝と考えて両方の言を容れて参りましたと詫びた。代官は、その言やよし、噂にたがわぬ至孝だと感服し、時服一重ねを授け、庄屋の資格を与え、名を孝右衛門と改めよと沙汰した。孝右衛門は小浜字駅に生まれ、粗食に甘んじても父母には常に美味を供したと伝えられている。
原典より
棚倉藩出張御陣屋の代官岡野先之進は、その日褒賞を与えようと出頭を命じた幸右衛門の姿を見て驚いた。—— 富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史)
『富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説』は、福島県富岡町の町史のうち考古・民俗を扱う巻で、ここにはその第九章「昔話と伝説」が収められている。昔話の節は昭和五十八年五月の福島県教育委員会による文化財基礎調査のまとめに町の既刊の話集から数編を加えたもので、麓山の白蛇や、大原の大吉・金平六など名のある狐の話が目立つ。伝説の節には朝賀城哀話、仏浜、戊辰戦争、鉱山、北風薬師などを収め、各話に伝承者の地区と名を添える。