夜の往診で狐に化かされた医者
どんな伝承か
むかし、竜田村の大谷に漢方医がいた。ある晩、家内が難産で苦しんでいるから早く来てほしいと馬で迎えが来たので承知し、馬で大原まで行ってみると立派な屋敷があった。手を尽くして無事に産ませると酒肴の膳が出され、遅いから泊まっていけと言われて泊まった。夜中、背中がひしゃひしゃするので目を覚ますと、原っぱの真ん中で寝ていた。驚いて帰った医者は、以後夜の往診をしなくなったという。その膳は塗屋という大家の婚礼で作られた料理で、何十膳か作ったうち一膳足りず、それが大原の真ん中にあったのだった。翌晩から医者の縁側には雉や山鳥、兎が置かれるようになった。狐の礼だという。
原典より
その1 むかし、竜田村の大谷に漢方医がおった。—— 富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史)
『富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説』は、福島県富岡町の町史のうち考古・民俗を扱う巻で、ここにはその第九章「昔話と伝説」が収められている。昔話の節は昭和五十八年五月の福島県教育委員会による文化財基礎調査のまとめに町の既刊の話集から数編を加えたもので、麓山の白蛇や、大原の大吉・金平六など名のある狐の話が目立つ。伝説の節には朝賀城哀話、仏浜、戊辰戦争、鉱山、北風薬師などを収め、各話に伝承者の地区と名を添える。