馬糞のぼた餅を作る化け狐
どんな伝承か
むかしむかし、よく晴れ上がった初夏の朝、上手岡の与三郎が馬を引いて大原へ朝草刈りに出かけた。一駄の草を刈って一息ついていると、柏の木が一面に生えた原っぱで、狐が柏の葉を頭からかぶって美しい娘に化け、さらに葉を集めて重箱をこしらえ、馬糞でぼた餅を作っていた。重箱を抱えた娘の後をつけると、近くの萱葺きの百姓家に入った。そこは与三郎の伯母の家であった。障子に穴をあけて覗くと、娘に化けた狐が病の伯母にぼた餅を勧めている。与三郎が思わず、それは馬のくそだと大声で叫んだところ、驚いた馬が走り出し、いつの間にか脚に縛りつけられていた与三郎は原っぱ中を引きずられ、半死半生の目に遭ったという。
原典より
その1 むかし、竜田村の大谷に漢方医がおった。—— 富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史)
『富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説』は、福島県富岡町の町史のうち考古・民俗を扱う巻で、ここにはその第九章「昔話と伝説」が収められている。昔話の節は昭和五十八年五月の福島県教育委員会による文化財基礎調査のまとめに町の既刊の話集から数編を加えたもので、麓山の白蛇や、大原の大吉・金平六など名のある狐の話が目立つ。伝説の節には朝賀城哀話、仏浜、戊辰戦争、鉱山、北風薬師などを収め、各話に伝承者の地区と名を添える。