きりばま街道で道を失う夜
どんな伝承か
明治の終わりごろ、仏浜の男が小良ヶ浜の漁港で用を済ませ、土産の鰹をかついで暗いきりばま街道を家路についた。途中でこの辺に近道があったはずだとつぶやくと、目の前に白くぼんやり続く道が現れた。天の助けと踏み込んだが藪ばかりで進めず、野ばらに絡まれて立ち止まった。すると今まで歩いてきた後ろの方から、ざぶんざぶんと波音がする。海は前にあるはずである。振り向いた拍子にたらの木の棘が頬を刺し、正気に返って狐に化かされたと悟った。来た道を戻ると、背中に狐が飛びかかって鰹を奪おうとしたので、藪へ振り落として一目散に逃げ帰ったという。
原典より
仏浜界隈では音に聞こえていた頑固者で、それ迄恐ろしいと思ったことのなかったわしも、この時ばかりはちいと冷汗を流したわい。—— 富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史・自治体史(民俗)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史・自治体史(民俗))
『富岡町史 第3巻(考古・民俗編)』第九章所収の昔話と伝説。福島県双葉郡富岡町(震災前)に伝わる口承を採録する。