祠前の大入道に投げられた男
どんな伝承か
むかし、岡内のある人が祭りの酒に酔い、ほろよい機嫌で稲荷の祠の前を通りかかった。高い欅のてっぺんでひぐらしが鳴き、夏の日も暮れかかるころである。祠の前まで来ると、大入道が道いっぱいに立ちはだかっていた。度胸のある人だったのでごめんと言って股の下をくぐり抜けようとしたところ、いきなり投げ飛ばされ、田んぼの中に落ちて気を失ってしまった。しばらくして気がつくと喉が渇いてたまらない。見回すときれいな水桶があったので、口をつけて心ゆくまで飲んだ。家に帰ると女房が臭い臭いと叫んで逃げ出した。稲荷狐に化かされ、肥溜めの水を飲んでいたのである。
原典より
むかし、むかし、岡内のある人がお祭りの酒に酩酊し、いなり祠の前をほろよいきげんで通りかかった。—— 富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史)
『富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説』は、福島県富岡町の町史のうち考古・民俗を扱う巻で、ここにはその第九章「昔話と伝説」が収められている。昔話の節は昭和五十八年五月の福島県教育委員会による文化財基礎調査のまとめに町の既刊の話集から数編を加えたもので、麓山の白蛇や、大原の大吉・金平六など名のある狐の話が目立つ。伝説の節には朝賀城哀話、仏浜、戊辰戦争、鉱山、北風薬師などを収め、各話に伝承者の地区と名を添える。