麓山の里に通った白蛇の若者
どんな伝承か
むかし、麓山の里に、たいそう美しい糸とり娘がいた。夜になると、どこからともなくこの娘のもとへ通う美しい若者があり、二人はいつしか相思相愛の仲になった。娘は若者がどこの者とも分からないので一計を案じ、ある日、針に糸をつけたまま若者の袴の裾に縫いつけた。この糸をたぐれば素性が分かると思ったのである。ところがその夜以来、若者は二度と姿を見せなくなった。若者は白沢に年古く住みついた大蛇の化けた姿で、針のために体が弱ってしまったのだという。娘はすでに若者の子をみごもっており、五月の節句に親が菖蒲湯をたてて娘を入れたところ、蛇の子をたくさん生んだそうだ。
原典より
むかしむかし、麓山の里に、それはそれは美しい糸とり娘がおった。—— 富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史)
『富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説』は、福島県富岡町の町史のうち考古・民俗を扱う巻で、ここにはその第九章「昔話と伝説」が収められている。昔話の節は昭和五十八年五月の福島県教育委員会による文化財基礎調査のまとめに町の既刊の話集から数編を加えたもので、麓山の白蛇や、大原の大吉・金平六など名のある狐の話が目立つ。伝説の節には朝賀城哀話、仏浜、戊辰戦争、鉱山、北風薬師などを収め、各話に伝承者の地区と名を添える。