稲荷の前で追えぬ提灯の火
どんな伝承か
重茂では、キツネは人をだますので見るのはよくないという。昔はキツネに化かされて山の中を歩かされ、馬のフンを団子だといって食わされた人が本当にいたそうだ。荒巻の稲荷神社の前はキツネがよく人を化かす場所で、夜歩いていると提灯の火が出てきて、それに近づこうと走っても距離は縮まらず、ゆっくり歩けば提灯もゆっくり進んでいくという。ここに来ていた炭焼きの職工の妻もよくキツネにだまされ、キツネが尾を切株にぶつけると、それが薪を切るのと同じ音がしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮古市史 民俗編 上巻――民間宗教者・俗信・妖怪(宮古市(編)・宮古市史)
『宮古市史 民俗編 上巻――民間宗教者・俗信・妖怪』は、宮古市の市史のうち、民俗編上巻の第四節「民間宗教者」と第五節「民間医療と俗信」を収めたものである。南部藩の宗門帳などの古文書から閉伊郡の山伏・神子・瞽女と里修験の成り立ちをたどり、イタコ・カミツキと呼ばれる巫女の系統、新宗教、民間薬、予兆・占い・まじない・禁忌を述べる。俗信の末尾には座敷童子・カッパ・キツネ・モウコ(幽霊)・オシラサマなどの話を、地区名を添えて箇条で並べる。