五明村若者への尾崎狐憑き
どんな伝承か
武州比企郡番匠村の甲の兄である乙の家には、前々から尾崎という悪狐が潜んでいるという噂があった。しかし何の証拠もないので村では信用していなかったところ、この尾崎狐に取り付かれたという五明村の若者を、大勢が戸板に乗せて担いで乙の家へ来たため騒ぎになった。この時は仲介人が入って一応落着したという。のちに地頭役所へ出された願書によれば、この五明村の若者の一件は五年ほど前の文久二年のことであったと述べられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近世史料にみる憑き物「オーサキ狐」の諸相(小池信一)
『近世史料にみる憑き物「オーサキ狐」の諸相』は、小池信一が著した、埼玉県に関わりの深い憑き物オーサキ狐を近世の古文書から論じた研究論文である。寛延四年の秩父郡三山村「おうさき」追放の再請書、天保六年の尾先狐追放教諭の触をめぐる村役人の願書、慶応三年から翌年にかけての比企郡番匠村の沼境と尾崎狐をめぐる出訴一件の三史料を翻刻する。はじめにで民俗調査から知られる俗信を六項目に整理し、各史料に解説を付す。