祠に伺って包みの中を当てる下女
どんな伝承か
著者の同僚の一人が壮年のころ、本所で相番を勤めていた。その屋敷の下女に狐が憑いてしばらく苦しんだが、やがて狐も離れて本心に戻った。その後、屋敷の内に小さな祠を建てて置いたところ、この女はその祠に伺っては人の吉凶を神のごとく言い当てるようになった。同僚が煙草入れなどを紙に封じ、これはどのような品かと問うと、女は神前へ行って、それは煙草入れだと答えた。不思議なことと思ったが、しばらく月数を経てから同じように尋ねると、今度は分からないと答え、その後は当たることがなくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
科学的教養(小泉丹・小泉丹・科学論・1948年(昭和23年))
『科学的教養』は、小泉丹が昭和二十三年に春秋社から刊行した、科学的なものの見方を説く評論である。精確さ・合理性・実証の面から科学的と非科学的の違いを論じ、河童の記録や呪いの効き目、『耳袋』の怪異談、狐憑き、幽霊・化物屋敷、人魂・鬼火・怪火を例に、日本人のものの考え方を検討する。昭和十七年に書いた前版を戦後に改稿したもので、序と起序に続く七章から成り、旧稿の終わりの二章を除いたと序に記す。