祖母と呼びかける質入れの夜具
どんな伝承か
牛込辺の町家の解き者の母が、夏になって夜具を質入れした。夕方それを出して来て臥せ、その夜具を着て一睡すると、祖母、祖母、暖かなるや、と声をかけられた。驚いて質屋へ問いただしたが、質屋は蔵に入れたままで人に貸したこともないという。心当たりを考えるうち、婆は、質物を持ち出したころに修験が一人来て無体に施しを乞うたのを、取り込み中でもあり手の内はないと断って等閑にしたことを思い出した。老人が、それだろう、その修験はまた来ると言うので、翌日その山伏を呼び入れて詫び、茶をふるまい施しを与えたところ、以後この夜具の怪は絶えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
科学的教養(小泉丹・小泉丹・科学論・1948年(昭和23年))
『科学的教養』は、小泉丹が昭和二十三年に春秋社から刊行した、科学的なものの見方を説く評論である。精確さ・合理性・実証の面から科学的と非科学的の違いを論じ、河童の記録や呪いの効き目、『耳袋』の怪異談、狐憑き、幽霊・化物屋敷、人魂・鬼火・怪火を例に、日本人のものの考え方を検討する。昭和十七年に書いた前版を戦後に改稿したもので、序と起序に続く七章から成り、旧稿の終わりの二章を除いたと序に記す。