印旛沼のカハボタル
どんな伝承か
赤松宗旦の『利根川図志』によると、印旛沼にはカハボタルと呼ばれる亡者の陰火が出るという。宗旦が若い頃、沼のほとりの吉高にいた五月の末、友人に誘われて夜釣りに出た。小舟で沼の中ほどまで漕ぎ出して釣っていると、真夜中ごろ急に空が曇り、大風と雨で真っ暗になった。やがて遠い水中から青い火が燃え上がり、しだいに近づいてきて、ついに宗旦の舟の舳先に乗った。逃げることもできず目を閉じて念仏を唱えていると、雨風がやんで火は消えていた。友人もそれを見たが、恐ろしくて声も出なかったという。
原典より
こはいぶかしと思ふ内に、幽かに遠き水中より一つの青き火閃々と燃えあがりぬ。—— 科学的教養(小泉丹・小泉丹・科学論・1948年(昭和23年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
科学的教養(小泉丹・小泉丹・科学論・1948年(昭和23年))
『科学的教養』は、小泉丹が昭和二十三年に春秋社から刊行した、科学的なものの見方を説く評論である。精確さ・合理性・実証の面から科学的と非科学的の違いを論じ、河童の記録や呪いの効き目、『耳袋』の怪異談、狐憑き、幽霊・化物屋敷、人魂・鬼火・怪火を例に、日本人のものの考え方を検討する。昭和十七年に書いた前版を戦後に改稿したもので、序と起序に続く七章から成り、旧稿の終わりの二章を除いたと序に記す。