岩国山から錦川へ下りる数千の陰火
どんな伝承か
岩国山では天気が蒸して雨の降る前夜、しばしば陰火が現れるという。薄暮に一つの火が現れ、夜の三更頃には数千の火となって錦川の淵の上に輝き、行列をなして往来し、互いに迎え合い揖譲するなど千態万状に変化して、夜明けとともに山へ帰っていく。俗に、山上で餓死した山伏の怨霊とも、伐られた老樹の木精ともいわれ、漁師はこれを見ると釣り鉤を捨てて逃げ出したという。静間密ら多くの人がこの怪火を目撃したと記されている。
原典より
大茶臼・小茶臼ノ尾ハ、東西相分レテ錦城ヲ擁ス。—— 岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年))
『岩邑怪談録』は、岩国藩士広瀬喜尚の怪談録に後人の増補と続録を合わせ、岩国徴古館が昭和五十一年に発行した資料集である。岩国周辺で人々が出会った化物・大坊主・生首・怪火・狐狸・天狗倒し・幽霊などの話を収め、藤田葆が編んだ『岩国沿革志』のうちの二冊を底本に、なるべく原文のまま新字に改めて載せる。広瀬の本録に、今田純一の追加、藤田の続怪談録と実事談・変死、静間密の付録五話を続け、巻末に語注を付す。