柳原土手の光り物と土蔵の反射
どんな伝承か
文化六年の夏、柳原の土手に夜な夜な光り物が出るという噂が広まった。前の年の夏から秋にかけて、神田紺屋町の嘉兵衛の子で十四になる少年が、風雨の中を通りかかり、立てかけてあった材木の倒れるのに驚いて命を落としていた。その執心が陰火となって燃えているのだと言われ、近所の者は夜中に見物へ出かけた。ところが調べてみると、同じ町の髪結市兵衛が持つ二間四方の土蔵に、通行人の提灯の光が映っていただけだった。修復の足場に筵を張ると、噂はぴたりとやんだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
科学的教養(小泉丹・小泉丹・科学論・昭和(戦中))
生物学者・小泉丹『科学的教養』(戦中刊)。国民の科学性とは科学知識の普及ではなく科学的態度であるとし、科学的・非科学的の境界を吟味したうえで、怪異談を科学的に検討する。