馬に乗り陣笠を冠る雷公の噂
どんな伝承か
享保の頃、巣鴨に住む大久保某が馬の稽古の帰り、雨と雷の中を駒込まで乗り切ってきた。ひときわ激しく鳴った拍子に馬が驚き、閉ざされた町家の戸を蹴破って前足を畳に乗せてしまう。人々に引き出してもらい、そのまま家へ帰った。翌日、家来が様子を見に行くと、昨夜は駒込片町へ雷が落ちたと噂になっている。落ちた先はまさに戸の破られた家で、雷は馬に乗り陣笠のようなものをかぶっていた、と町の者は語ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
科学的教養(小泉丹・小泉丹・科学論・1948年(昭和23年))
『科学的教養』は、小泉丹が昭和二十三年に春秋社から刊行した、科学的なものの見方を説く評論である。精確さ・合理性・実証の面から科学的と非科学的の違いを論じ、河童の記録や呪いの効き目、『耳袋』の怪異談、狐憑き、幽霊・化物屋敷、人魂・鬼火・怪火を例に、日本人のものの考え方を検討する。昭和十七年に書いた前版を戦後に改稿したもので、序と起序に続く七章から成り、旧稿の終わりの二章を除いたと序に記す。