恋しい人のもとへ同行した宿の娘の生霊
どんな伝承か
『道』誌に中村清吉の名で載った話。東大医学部の学生だった語り手の同窓MとTが、ある夏群馬の温泉に遊び、宿の一人娘とMが恋仲になった。帰京後のMは勉強が手につかず沈みがちで、翌夏Tは一人で草津を訪ねた。娘は前年から原因の分からない病で死にかけており、Mを慕うあまりだと打ち明けた。TはMを連れて来ると約束して帰途についたが、駅前の茶店では二人分の座布団と茶が出され、若い奥様が一緒だったと言われた。汽車でも隣の客が女の半身を見て叫び、本郷の寄宿に戻るとMも婦人を連れて帰ったのかと尋ねた。翌朝二人で草津へ着くと、娘はその日の未明に亡くなっていた。
原典より
兎に角も歸つた用件を逐一告げて、翌朝相伴つて再び草津に到つて見ると、娘はその日の未明に絶命したとのことであつた。—— 心霊不滅(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1940年(昭和15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊不滅(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1940年(昭和15年))
『心霊不滅』は、岡田建文が著し、昭和十五年に大阪の国民書院が発行した心霊研究書である。人の心霊は肉体の死後も存続するという立場から、神道の神霊の垂示を引きつつ、心霊の本質と「化精」、遠感と魂の遊離、生霊、二重体、交霊術と霊媒、霊感筆記、幽霊写真などの物理現象、幽霊の出現を論じる。序説と七章からなり、第三・四・五・七章に「例一」「例二」と番号を付けた事例を並べ、今昔物語の説話、江戸から昭和の国内の見聞、欧米の報告を挙げる。