一周忌の日に酒を飲みに来た旧友
どんな伝承か
明治四十三年八月五日の夕方、川合春充は大阪市東区にある友人の弁護士藤田(仮名)の事務所を訪ね、奇妙な話を聞かされた。七月三十一日の昼、四年ぶりに旧友の前中謙蔵が訪ねてきて、牛肉と麦酒を前に二時間ほど病気の苦労を語り、「幽霊というものはあるよ」と言い残して帰った。ところが玄関から門へ回る間に姿が消え、二日後に前中の兄から、弟は昨年の七月三十一日に亡くなり今日が一周忌だという手紙が届いた。女中も来客を覚えていて、怖がって暇を願い出たという。
原典より
僕が庭へ出るときに立闘で下駄の音がして居たが、門の所から玄闘を見ると誰も居ない。—— 心霊不滅(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1940年(昭和15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊不滅(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1940年(昭和15年))
『心霊不滅』は、岡田建文が著し、昭和十五年に大阪の国民書院が発行した心霊研究書である。人の心霊は肉体の死後も存続するという立場から、神道の神霊の垂示を引きつつ、心霊の本質と「化精」、遠感と魂の遊離、生霊、二重体、交霊術と霊媒、霊感筆記、幽霊写真などの物理現象、幽霊の出現を論じる。序説と七章からなり、第三・四・五・七章に「例一」「例二」と番号を付けた事例を並べ、今昔物語の説話、江戸から昭和の国内の見聞、欧米の報告を挙げる。