借家を検分しに行った妻の生霊
どんな伝承か
明治二十五年九月、司法省に勤める官吏のK氏は、芝区愛宕町の仮住まいを引き払おうと、妻の菊子と借家を探し歩いていた。赤坂の江戸見坂上で構えのよい一軒を見つけたが、持ち主が留守で中を見られずに帰る。三日目の夜中の二時頃、菊子は突然起き出して座敷や台所を検分し、また眠った。翌夜も同じことが起きる。本人に覚えはなく、ただあの借家を二晩見てきた気がすると言って、間取りも泉水の鯉の多さも言い当てた。新聞には同じ二晩、その家に女の幽霊が出たと載っていた。
原典より
例四 露國の皇后の姿例五 自己の假體を見る例六 言語したといふ二重體例七 最も顕著の事實例八 『西北に舵を執れ』例九 議事場へ出席する例十 幼妹を抱いた姿第五章 交靈術と霊媒一、近代交靈術の起源—— 心霊不滅(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1940年(昭和15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊不滅(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1940年(昭和15年))
『心霊不滅』は、岡田建文が著し、昭和十五年に大阪の国民書院が発行した心霊研究書である。人の心霊は肉体の死後も存続するという立場から、心霊の本質、遠感と魂の遊離、生霊、二重体、交霊術と霊媒、霊感筆記、幽霊写真などの物理現象、幽霊の出現を論じ、明治・大正の国内の見聞と欧米の報告を事例に挙げる。総説から幽霊現象まで七章からなり、各章に「例一」「例二」と番号を付けた事例を並べる。