暗い本堂の障子に映る臨月の影
どんな伝承か
明治三十二年、東京の永井三蔵という人の夫人が、長崎県手塚の無量寺に寄宿し、女子のための夜学を教えていた。ある晩、授業を終えて生徒と本堂脇の一室で話していると、灯を落として真っ暗なはずの本堂の障子に、腹の大きくふくれた女の影がくっきりと映った。生徒を怖がらせまいと夫人は黙っていた。しばらくして外出先から戻った住職が、足袋屋の内儀がたった今亡くなった、生前しきりに寺へ行きたいと言っていた、八か月の子まで道連れで気の毒だと語ったという。
原典より
例一〇 九十七度出現した亡靈例一一 二個出る幽靈例一二 蚊帳の中へ出た幽靈例一三 狩獵家を悩ました亡靈例一四 旅館の幽靈座敷例一五「九月二十二日」例一六 十年間出た少婦例一七『灰色夫人』例一八 天文學者の見た幽霊—— 心霊不滅(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1940年(昭和15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊不滅(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1940年(昭和15年))
『心霊不滅』は、岡田建文が著し、昭和十五年に大阪の国民書院が発行した心霊研究書である。人の心霊は肉体の死後も存続するという立場から、心霊の本質、遠感と魂の遊離、生霊、二重体、交霊術と霊媒、霊感筆記、幽霊写真などの物理現象、幽霊の出現を論じ、明治・大正の国内の見聞と欧米の報告を事例に挙げる。総説から幽霊現象まで七章からなり、各章に「例一」「例二」と番号を付けた事例を並べる。