砂のついた握り飯を食べる亡者
どんな伝承か
京都のある寺の家族が、以前に信濃の善光寺へ参詣した帰り、門を出て二、三町ほど行ったところで、かつて寺の下男だった男に出会った。これから善光寺へ参るというので近くの飯屋に誘い二人分の膳を頼んだが、男は弁当があると断り、砂のついた握り飯を砂をよけながら食べていた。別れて帰ると男はすでに死んでいた。話を聞いた周りの人々は、葬式で供えた握り飯が土間に落ちて砂がついたのを構わず棺に納めたので、幽霊はその飯を持って行ったのだろうと言い合ったという。水野葉舟の祖母が当人から聞いた話である。
原典より
さて別れて歸つて見ると、其男は死亡して居たので變だと思つて、右の話をすると、周圍の人が驚いて葬式のときに供へる撮飯が土間へ落ちて砂が附いたのを構はず棺に入れたが、…—— 心霊不滅(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1940年(昭和15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊不滅(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1940年(昭和15年))
『心霊不滅』は、岡田建文が著し、昭和十五年に大阪の国民書院が発行した心霊研究書である。人の心霊は肉体の死後も存続するという立場から、神道の神霊の垂示を引きつつ、心霊の本質と「化精」、遠感と魂の遊離、生霊、二重体、交霊術と霊媒、霊感筆記、幽霊写真などの物理現象、幽霊の出現を論じる。序説と七章からなり、第三・四・五・七章に「例一」「例二」と番号を付けた事例を並べ、今昔物語の説話、江戸から昭和の国内の見聞、欧米の報告を挙げる。