神童次郎の失踪と山の怪異
どんな伝承か
能美郡西尾村の樵夫利兵衛には、神童と評判の次郎という子がいた。その次郎がある日突然姿を消し、いくら捜しても見つからないので、家では仮の葬儀を営んだ。以来、山では太鼓の音が鳴り、伐り倒したはずの老杉が宙に浮き、大石が落ち、山肌が崩れるといった怪異が続いた。ひと月ほどして次郎が父の枕元に立ち、白髪の老人に連れられて巌窟で暮らしている、山へ入ってこの地を侵してはならないと告げて消えた。利兵衛は恐れて樵をやめ、村を去ってそのまま行方知れずになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年))
『暮しの中の妖怪たち』は、岩井宏實が昭和六十一年に著した妖怪の概説書である。鬼・天狗・河童から山姥、産女、雪女、怪火、ザシキワラシ、化け猫、狐狸、幽霊まで、各地の伝承や古典・絵画に見える妖怪を一つずつ取り上げ、その姿と仕業を説く。第I章で個々の妖怪を紹介し、第II章で妖怪の性格、出現の空間と時、正体を論じ、巻末に著者が資料とした妖怪の本の一覧とあとがきを置く。