蛇の鱗を礼に置いていった女
どんな伝承か
内野村の百姓、蓮見左之次郎が馬の背に野菜を積んで売りに出た、その帰りのことである。千住大橋の渡しを越えてほどなく若い女に呼び止められ、見沼まで行きたいが歩き疲れて難儀している、途中まででよいから馬に乗せてほしいと拝まんばかりに頼まれた。気の毒に思って乗せてやり、見沼の三弁天のひとつ山口の弁天まで来ると、女はここでよいと降り、礼だといって紙の包みを押しつけ、決して中を見るなと言い残して去った。馬の背は重荷を運んだように汗で濡れている。家に帰って神棚に供えたものの、言葉が気になって開けてみると、二銭銅貨ほどの蛇の鱗が二枚入っていた。
原典より
見沼の主が大蛇であるとして、さまざまな伝えを生んでいる。—— 川口市史 民俗編――伝説(川口市(編)・川口市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
川口市史 民俗編――伝説(川口市(編)・川口市史)
『川口市史 民俗編――伝説』は、川口市が編んだ市史民俗編のうち、第四章「伝説」を収めたものである。六兵塚や首塚などの塚、山・池沼・樹木にまつわる話、八百比丘尼の椿、神社・地蔵・観音・薬師の霊験、地名の由来、正月の餅を搗かない家例や蛇まつり、川口の鋳物の始まりなどを、地内の地名や家名とともに記す。自然伝説、信仰伝説、歴史伝説の三節に分け、節の中を塚・山・池沼などの項に立てる。