大蛇の跡が続いたお熊んさまの遷座
どんな伝承か
前川の伊田家の屋敷内には大銀杏がそびえ、その根方に熊野社を祀って、お熊んさまと呼んでいた。初代の留五郎が分家に出たころには、すでにそこに祀られていたという。伊田家では毎月一日と十五日に供え物をして丁重に祀ってきたが、光太郎の代になり、粗末になってはいけないというので前川神社の境内へ移すことにした。神主とも相談し、丁重に拝んでもらったうえでお移し申し上げた。ところがそのとき、銀杏の木の下から神社まで、大蛇が這ったような跡がずっと続いていた。お熊んさまは大蛇だったのだ、いや使いが大蛇なのだと、村ではしきりに取り沙汰された。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
川口市史 民俗編――伝説(川口市(編)・川口市史)
『川口市史 民俗編――伝説』は、川口市が編んだ市史民俗編のうち、第四章「伝説」を収めたものである。六兵塚や首塚などの塚、山・池沼・樹木にまつわる話、八百比丘尼の椿、神社・地蔵・観音・薬師の霊験、地名の由来、正月の餅を搗かない家例や蛇まつり、川口の鋳物の始まりなどを、地内の地名や家名とともに記す。自然伝説、信仰伝説、歴史伝説の三節に分け、節の中を塚・山・池沼などの項に立てる。