亡き母と語らう娘の声を聞いた隣人
どんな伝承か
近江国愛知郡北蚊村に、宇野うめという女性がいた。母の春野はすでに亡く、うめは一人暮らしであった。ある夜、隣人の宇部茂兵衛がうめの家の門前を通りかかると、家の中で死んだはずの母春野とうめが娘の将来を案じて話し込む声が聞こえた。不思議に思い戸の隙間から覗くと、うめは一人だけで床に臥しており、それでも母娘の会話はなお続いていたという。
原典より
しかも、春野との談話は、まだしきりに続いていた—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。