夕張岳に響く女の子の声
どんな伝承か
二〇〇二年十月末、山歩きを趣味とする男が単独で夕張岳に登った。登山口へ続く林道は九月下旬から閉鎖され、山小屋も無人になる。十キロ近い林道歩きを承知でその日を選んだのは、誰にも会わない静かな山を歩きたかったからである。昼過ぎに山頂へ着き、下山の途中、馬の背と冷水の分岐で荷を下ろして三十分ほど休んでいると、尾根の方から女たちの楽しげな笑い声が近づいてきた。道の真ん中の荷物を端へ寄せて待ったが、声の主はなかなか現れず、やがてさらに大きく笑い声が響いた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
水辺の怪談3(水辺の怪談)
『水辺の怪談3』は、釣り人たちが海や川、湖で体験した怪異を、体験者自身の筆で綴った実話怪談集である。東京湾の夜の一本釣り、男女群島への磯釣り遠征、サイパン、北海道の夕張岳、利根川や大井川上流の渓流など、二〇〇〇年代の釣行や旅先での出来事を中心に二十編を収める。「海の章」と「川・湖の章」の二部に分け、各編の冒頭に書き手の居住地や釣りの経歴を記した短い紹介を置く。