鵜飼いの夜のひたい取の渕
どんな伝承か
『老圃奇談』に載る土佐郡尾立村の話。ひたい取という渕があり、人がめったに近づかない奇異な場所とされた。ある月の明るい夜、里人がこの渕で鵜を使って漁をしていた。渕の脇に大木があり、その根元で休んでいると、梢から小さな蜘蛛が下りてきて糸を出し、その者の足の指に巻きつけた。怪しんだ里人は糸を傍らの大木の根に巻きつけておいた。しばらくすると大木が根こそぎ引き上げられて渕に落ち、大きな笑い声がしたかと思うと何事もなく消えた。それ以来、里人は恐れてこの渕へ行く者がなくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第12巻』は、四国四県(香川・愛媛・徳島・高知)の伝説を話型ごとに集めた伝説集成の一巻である。神々の争いや大人の足跡、弘法大師の彫り残しや麦の種、英雄の誕生、長者、人柱、蛇聟、狼の報恩、化猫退治、首切れ馬、夜泣石、地蔵の霊験などを、町村誌や地方の伝説集、昭和五十三年度立命館大学説話文学研究会の採集調査稿から採る。百三十九話に通し番号を付け、各話に伝承地と出典、高木・柳田の分類名を添え、県別の〔類話〕と〔文献〕を続ける。