物が宙に舞う屋敷と円了の戒め
どんな伝承か
明治二十五年の夏、静岡市城内の榊原某氏の宅で、物品が突然空中に舞い上がるなどの怪事が起こった。このことは諸方の新聞が大いに書き立てて評判となり、狐狸のしわざだろうという噂が立った。円了はこれについて、こうした怪事は毎年二、三回は諸県で起こっており格別珍しいことではないと述べ、これまで発覚した同種の怪事は決して狐狸や天狗の仕業でも神仏の所為でもなく、その原因はたいてい人にあると注意した。世間の人は人以外に原因を求めようとするから、怪はますます怪となるのだという。人から起こる怪事には、故意によるものと一種の精神病によるものの二種があるとも説いた。
原典より
明治二十五年の夏、静岡市城内の榊原某氏の宅に、物品が突然空中に舞い上るなどの怪事があり、…—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。