通学する妹の握飯に穴があく怪事
どんな伝承か
静岡県榛原郡川崎の鈴木喬太郎が報告した怪事。九歳六か月の妹が明治二十三年六月二十七日、いつものように毛糸の袋へ弁当の握飯を入れて通学したところ、昼に開くと袋は括られたままなのに、握飯は指で抉ったように空洞になっていた。翌二十八日も同じことが起き、途中で突然腰に重みを感じて転倒した。三十日には転倒した場所の手前で袋を検めると既に穴が空いており、進むとさらに穴が増えた。同種の怪事は前年秋から十数回あり、いずれも近隣の子弟に限られ、大人には起きなかったという。
原典より
よりて妹は家を距ること凡二十二三町の処に至り先づ袋を検せしに、既に悉く一孔の穿たれたるを見たりしとぞ—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。