無辺さんが拳で打って湧かせた井戸
どんな伝承か
香川県大川郡白鳥町福栄の無辺さんは、夏でも冬でも柿色の衣一枚に縄の帯をしめ、腰には鎌をさして、大和の大峰山へ一夜のうちに往復していたという。そば粉と木の実を食べ、火を通したものは一切口にしなかった。里の人は臼を横にし、その上へ新ごもを敷いて丁重にもてなしたという。与田神社の南、林の中にある井戸は無辺さんがこぶしで大地を打った跡で、そこから清冽な水があふれ、四季を通じてかれることはなかった。この水ははれものに効験があると伝えられている。
原典より
無辺さんは夏でも冬でも柿色の衣一枚、縄の帯をしめ腰には鎌をさし、大和の大峰山へは一夜のうちに往復していた。—— 新編香川叢書 民俗篇――昔話と伝説(香川県(編)・新編香川叢書) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
新編香川叢書 民俗篇――昔話と伝説(香川県(編)・新編香川叢書)
『新編香川叢書 民俗篇――昔話と伝説』は、香川県の叢書の民俗篇のうち、第八編「口承文芸」を収めた部分である。香川県内の昔話と伝説を扱い、昭和初年からの採集の歩み、呼び名や発端・結末の句、桶屋やほうろく売り・遍路などの運び手、語り手の横顔を論じたうえで、綾上町などで聞いた未発表の昔話を話者名付きで掲げる。伝説の章は樹木・石と岩・水と池と渕・塚と穴・祠と堂・坂と山と峠と谷・動物の項目に分け、各話の末尾に伝承地の郡町名を添える。