マサンの実が喉につかえたアダム
どんな伝承か
『天地始之事』の人生観には、貧しい潜伏生活の苦しみが色濃く出ている。アダムはマサン(林檎)の実を喉につかえさせ、その苦しさで顔つきが変わり、天に叫び地に伏して血の涙を流したとされ、楽園を追われる苦しみは心の苦しみではなく喉の詰まる苦しみとして描かれる。下界に追われた二人はデウスから「獅子鳥」を食べるよう命じられたが、子孫が増えて獅子鳥だけでは足りなくなり、デウスに願うと五穀が不思議な力で与えられた。人々は食べ物がたくさんになったと喜んだという。
原典より
物語の順を追うて読んでいくと、まずアダムはマサンの木の実が喉にかかって、苦しみのため面相が変わり、「天に叫び地に伏して、血の涙を流しける」とある。—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。