百足の赤城神を射た万三郎
どんな伝承か
狩人の起こりを語る伝えのうち日光派と呼ばれるものの一つに、岩手県上閉伊郡の阿部家に伝わる『山立由来記』がある。それによると清和天皇の時代、下野国の日光山のふもとに万三郎という弓の名手が住み、狩りをして暮らしていた。万三郎は日光権現に見込まれ、赤城明神との神々の戦いで、百足に姿を変えて攻めてきた赤城の神を射負かした。その手柄で山々を自由に狩る許しを得て、自らも山のふもとに神として祭られ、子孫は長くその特権を受け継いだという。同じ型の話は秋田のマタギや会津の狩人にも伝わっていた。
原典より
日光派所伝の一つ、岩手県上閉伊郡の阿部家に伝える『山立由来記』には、清和天皇の世下野国日光山麓に住む弘名天皇九三代の末という万三郎、…—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。