御神体として担がれる鏡餅
どんな伝承か
北浜村では、餅そのものが御神体として扱われた。村の四十戸から米を五合ずつ集め、四人の頭屋が鏡餅を一重ね搗き上げる。この餅に触れた者は向こう二年間、死人に近づけないとされるほど神聖視され、頭屋はその夜を寝ずに守った。翌朝、餅の縁に藁縄の輪を掛け、ノブという木で井桁を組んで上下から締める。正月十六日の暁、人通りのないうちに頭屋ふたりが背負って堂へ運び、長押の釘に掛けてハナノキの青い柴を挿す。村人はこの餅を前に宴を開き、頭渡しの式を営んだ。祭りの後は次の頭屋が受け取り、切って各戸に配った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。