狐寄せの乗童を望む者が殺到
どんな伝承か
島根県平田市の海岸部では、明治のころ、狐鳴きが悪かったので、狐を寄せてその託宣を聞こうということになった。ところが、その乗童(のりわら)になることを希望する者が多すぎて困ったという実話がある。霊力たくましい動物を招き寄せて託宣を聞くことを村の恒例の行事としている土地は少なくなく、そこでは霊獣に憑かれることを決して忌まわしいこととは考えていない。狐憑きを罪悪視するふうがあっては、こうした話は出てこないのである。
原典より
明治のころ、狐鳴きが悪かったので、これを寄せてその託宣を聞こうということになった時に、その乗童(のりわら)になることを希望する者が多すぎて困ったという実話がある—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。