陥島を逃れた七人と染歯の起原
どんな伝承か
長崎県五島に伝わる染歯の起源譚。くり船で命をつないだ七人が久賀島の「蕨」という小部落に住み着いたが、夫婦の区別がなかったため、女は眉を落とし鉄漿(はにかね)を付けるようになったのが染歯の始まりだと語られている。昭和に入ってもなお、少数ながら歯を染めた老婦人が見受けられたと伝えられる、風習の起源をめぐる話である。
原典より
くり船にのり、いのちをつぎし七人のものは、その島をすみ所とさだむといえども、夫婦のきわめなくゆへ、女はまゆをおろし、はにかね付ること、この時より始めなり—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。