一冊の書と一切経を量った天秤
どんな伝承か
長崎県外海地方の『天地始之事』に語られる奇跡譚。キリストと仏僧学十らんが一切経の価値をめぐって争い、キリストの持つ一冊と馬七駄分の一切経とを天秤にかけたところ、キリストの一冊のほうが桁違いに重かった。学十らんはこれに屈して洗礼を受けたと語られており、仏教に対するキリスト教の優位を説く逸話である。この後キリストは学十らんを残しローマへおもむいたと続く。
原典より
結局キリストの持つ一冊と、「馬七駄の一切経」とを天秤にかけて勝負したところ、キリストの持つ一冊が「けんかくちがうて」重いので、学十らん争うべくもあらず、洗礼を受けた。—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。