佐々成政を襲った鬼の軍勢
どんな伝承か
絵本太閤記によれば、佐々成政が軍を進めていたとき、不思議にも一陣の怪風がにわかに起こって川水を巻き上げ石を飛ばし、北国勢の旗指物をことごとく吹き折った。大風に向かい難く、陣は崩れようとした。成政が口惜しいと鎧を踏んばって四方をきっと見渡すと、神通川の水上、呉服村の傍から、一面に怪しく恐ろしい鬼が、手に刀を持ち身に鎧を着けて、幾百万という限りもなく天に蔓り地に満ちて、鬨の声を作りながら成政めがけて渦巻き来たったという。
原典より
成政こは口惜しこ鎧踏んばり四方を仡こ見渡せば、神通川の水上、吳服村の傍より一面に怪けに恐ろしき鬼の手に刀を持ち身に鎧を着し、幾百萬こいふ限りもなく天に蔓り地に充ちて…—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。