肥前島原で河童が精血を吸い屍を返す
どんな伝承か
肥前島原の宮司が語ったところでは、その国にも河太郎が多く、年に一、二度は必ず人を海に引き込み、精血を吸ってから亡骸を返すという。そこで亡骸を棺に入れず葬りもせず、板にのせて草庵に置き、香華も特に供えずにおく。すると亡骸が朽ちていくにつれ、その人を取った河太郎の体も崩れて、ひとりでに死んでしまう。そうでもしなければ河太郎は人の手で捕らえられるものではなく、どれが取ったのかも分からないので、まことに巧みな術だと閑窓自語は記している。
原典より
年に一兩度ばかり、かならず人を海中に引き入れて精血を吸ひて後、かたちをかならずかへす也。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。