佐用郡で河童が骨継ぎ薬を伝える
どんな伝承か
播磨の佐用郡のある家中から骨接ぎの妙薬が出ていて、河童から伝わった薬として信仰されていた。宝永のころの七月下旬、暑さで弱った馬を川辺の柳につないでおくと、馬が何かを引きずって厩へ駆け込んだ。見ると猿のようなものが手綱を体に巻いてうずくまり、頭のてっぺんが少しくぼみ、髪は赤い松葉のようだった。帰った主人は、この川筋で時々人が消えるのもこいつの仕業だと怒って右手を切り落とした。河童は泣いて命乞いをし、一門にも村の衆にも手を出さないと誓い、手を返してくれれば今夜のうちに接いでみせると言う。主人はその薬の処方を教えさせて手を返し、以後そこでは人が消えず、処方は子孫に伝わったという。
原典より
我今日馬を淵に曵き入れんこして誤つて引きづられ来りてうきめにあふ。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。