蒲生氏定の女房に化けた野狐
どんな伝承か
『江源武鑑』によると、天文七年九月二十日、日野の蒲生忠次郎氏定から次のような報告が届いた。氏定の妻が野狐に取られ、その狐が妻になりすまして、この年まで三年のあいだ氏定と夫婦の契りを結んでいた。それが今月の十八日に正体を現し、野狐となって去っていったという。氏定の息子である蒲生忠三郎は、その狐の子であると記され、世にもまれなことだと結ばれている。
原典より
今月十八日彼の女房本身をあらはし、野狐になりて去るの由を今日蒲生氏定が方より委細言上す。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。