肉の塊から生まれた女の子
どんな伝承か
見世物の血塊を論じた章の注で、著者が異物出産の古い例として引く日本霊異記の話。肥後国八代郡豊服郷の豊服広公の妻が身ごもり、霊亀二年十一月十五日の明け方に、卵のような肉の塊を産んだ。夫婦は不吉だと思い、器に入れて山の岩の間に隠しておいた。七日後に見に行くと、肉の塊の殻が開いて女の子が生まれていた。父母は連れ帰って乳を与えて育て、話を聞いた国中の人が不思議がった。八か月たつと体は大きくなって背丈は三尺五寸ほどになり、生まれつき口が達者で賢かったという。
原典より
靈龜二年辛亥冬十一月十五日寅時生一肉團其姿如卵。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。