石を産んだ女と伊奈婆大神
どんな伝承か
同じく日本霊異記から著者が引く、石を産んだ女の話。美濃国方県郡水野郷の楠見村に、県氏の姓を持つ女がいた。二十歳を過ぎても嫁がず、男を知らないまま身ごもり、三年たった延暦元年の春二月下旬に二つの石を産んだ。石は五寸四方ほどで、一つは青と白のまだら、もう一つは青一色で、年ごとに大きくなっていった。隣の淳見郡にいる伊奈婆という大神が占い師に乗り移り、その石は自分の子だと告げた。そこで女の家の中に忌垣を立てて石を祀ったという。
原典より
山部天皇世延曆元年关亥春二月下旬產生二石。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。