三十余軒が守る男女別の檀那寺
どんな伝承か
茨城県猿島郡岩井町の近くにある中根部落では、倉持・富山の両家をあわせた三十余軒が、いずれも固定型の男女別半檀家を守っている珍しい土地である。女子は隣の藤田部落にある浄土宗高声寺、男子は同じ中根部落の真言宗延命寺の檀那である。女子が部落の寺、男子が部落外の寺という一般の傾向とは逆に見えるが、延命寺はもと上岩井部落にあって後に移ってきた寺、高声寺はもと中根にあって隣へ移った寺だという。ここでは分家も本家と同じく半檀家になるので家数は増える一方で、倉持家の本家当主は両寺の檀家総代を務めている。
原典より
いま幼児を別檀とする半檀家の成因の特別なものであることをみたが、男女別半檀家制についても、生家継承型からする前記の成立過程とはまた異なった成因をもったものがあると思われる。—— 霊魂の行方(最上孝敬・最上孝敬・葬送民俗・1984年(昭和59年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の行方(最上孝敬・最上孝敬・葬送民俗・1984年(昭和59年))
『霊魂の行方』は、最上孝敬の葬送習俗に関する論説を集め、名著出版が昭和五十九年に刊行した論集である。死者の霊を家から送り出す霊送りやカラダビ、骨掛け、男女別墓制と半檀家、無縁仏、盆と施餓鬼、葬儀の水など、千葉・埼玉をはじめ各地で聞き取った習俗と既刊の報告をもとに論じる。「霊送りとその周辺」「葬送の諸問題」「葬祭の民俗」の三章に二十八篇を収め、巻末に初出一覧、大島建彦の解説、年譜、著作目録を付す。