飛脚に出す温かい飯と女のたしなみ
どんな伝承か
訃報を告げて回る者が、訪ねた家で必ず食事のもてなしを受ける風は、たいそう広い範囲でみられた。愛知県東加茂郡の下山村では、飛脚と呼ぶこの告げ人に、茶と温かい飯を出さねばならないと定まっていた。翌日食べる米にも事欠くほど貧しい家でも、飛脚が来たときに出す飯の分だけは残しておくのが女のたしなみだとされたという。飛脚の役はのちに組内の者の務めとなったが、著者は本来ごく近しい者が担ったはずだと見て、この接待を、葬家と親しい家々が死の直後に共食で結ばれた名残と解している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の行方(最上孝敬・最上孝敬・葬送民俗・1984年(昭和59年))
『霊魂の行方』は、最上孝敬の葬送習俗に関する論説を集め、名著出版が昭和五十九年に刊行した論集である。死者の霊を家から送り出す霊送りやカラダビ、骨掛け、男女別墓制と半檀家、無縁仏、盆と施餓鬼、葬儀の水など、千葉・埼玉をはじめ各地で聞き取った習俗と既刊の報告をもとに論じる。「霊送りとその周辺」「葬送の諸問題」「葬祭の民俗」の三章に二十八篇を収め、巻末に初出一覧、大島建彦の解説、年譜、著作目録を付す。