子らが蜜柑をねだる挙母のエベスコ
どんな伝承か
矢頭和一の「恵比須講の話」によると、西三河の挙母町では、一〇月二〇日のエビス講に商売繁盛を願って各商家が子供たちへ無制限に蜜柑を与えた。もらい手が多いほど店が繁昌すると考えられ、この蜜柑を与えることをエビスコ、もらうことをエベスコをもらうといった。町を中心に三里内外の農村から一〇歳から一二、三歳までの子供が袋網を首に吊るし、朝早くから群れをなして商店の軒下に集まり、大戸が開くや否や「エベスコおくれ」と呼んで片手を伸ばせるだけ伸ばした。用意した蜜柑が残ると不吉、不足すれば商売繁昌として大よろこびしたという。
原典より
商店のほうでは用意の蜜柑が残ると不吉、用意したので不足という時は商売繁昌とて大よろこびをするということである。—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。