喪服を返すとき添えた煮干し二匹
どんな伝承か
和歌山県御坊市の野田三郎氏によれば、葬式に着る婦人の喪服を持たない家では他人から借りることが多く、それを返す際に煮干し(イリジャコ)二匹を包んで添える習わしがあったという。明治十二年生まれの野田氏の母がそうしているのを見て育ち、当時七十一歳の老婆も同様であったと語った。死霊を祓う意味ではないかとされ、後にこの習俗は煮干し一袋を添える形に変化したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の行方(最上孝敬・最上孝敬・葬送民俗・1984年(昭和59年))
『霊魂の行方』は、最上孝敬の葬送習俗に関する論説を集め、名著出版が昭和五十九年に刊行した論集である。死者の霊を家から送り出す霊送りやカラダビ、骨掛け、男女別墓制と半檀家、無縁仏、盆と施餓鬼、葬儀の水など、千葉・埼玉をはじめ各地で聞き取った習俗と既刊の報告をもとに論じる。「霊送りとその周辺」「葬送の諸問題」「葬祭の民俗」の三章に二十八篇を収め、巻末に初出一覧、大島建彦の解説、年譜、著作目録を付す。