かまどの湯気から笑った弟
どんな伝承か
昭和十九年の夏のある朝、妻が怯えた様子で夢の話をした。明け方に起きて朝食の支度をしようと炊事場を見ると、かまどに掛けた鍋から湯が沸き立ち、その湯気の中から筆者の弟である三郎が首を出してにっこり笑った。背筋に悪寒が走ったところで目が覚め、夢だったと分かったという。のちに届いた戦死公報で、出征していた弟がちょうどその前後にバシー海峡で戦死していたことが判明した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。