涙をこぼした戦死者の写真
どんな伝承か
終戦間近の頃の話だという。母の一番上の兄は南方の島で戦死したが、家族がまだそれを知らずにいたある夏の日、祖父は縁側に近い部屋で昼寝をしていた。ふと見ると、前の庭にその長男が立っている。何を問いかけても答えないので不思議に思った。夢から覚めて長男の写真に目をやると、写真がぽろぽろと涙をこぼしていた。祖父はそれで息子の死を悟ったという。数日後、戦死の知らせが家に届いた。語り手は小学校に上がる前、昭和二十八年頃に祖父から聞いた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。