明星の井戸
どんな伝承か
遠い昔、桶川や上尾あたりの人びとは、近くから明けの星が飛び出したように見え、空一面にたなびく紫の雲の中に天女が立つのを見た。天女の手から細い糸が垂れていたので、村人がその糸をたどると、倉田の寺の井戸から出ていた。井戸のそばでは住職が経を読んでおり、こう語った。数日前から夜になると寺の近くで不思議な楽の音がし、昨夜は経を読んでもやまないので音をたどると、井戸のほとりに天女がいた。近寄ろうとすると姿が消え、井戸から光るものが空へ飛び出し、天女も糸を引いて昇っていった。見上げると明けの明星が輝いていたという。以後この寺は明星院と呼ばれるようになった。
原典より
村の人びとは、この糸を見失わないようにして行くと、倉田のお寺の井戸から出ているのでした。—— 桶川市史 第6巻(民俗編)――伝説・昔話(桶川市(編)・桶川市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
桶川市史 第6巻(民俗編)――伝説・昔話(桶川市(編)・桶川市史)
『桶川市史 第6巻(民俗編)――伝説・昔話』は、桶川市の市史のうち民俗を扱う巻で、ここにはその昔話・伝説の部分と第四節「予兆・占い・禁忌・呪い・民間療法」が収められている。昔話・伝説は調査ではほとんど聞かれなかったため、「広報おけがわ」に連載した話を中心に、イットコショダンゴ、古池の大蛇、熊野神社の池の膳椀貸し、狐狸に化かされる話など二十余りを区分せずに載せる。俗信の節は、言い伝えを桶川・加納・川田谷の地区ごとに箇条で並べる。