夫の帰りを祈ったお伊勢の森
どんな伝承か
昔、村の若者が器量よしの嫁をもらった。田も多く夫婦仲も良かったが、三年、五年たっても子ができなかった。伊勢参りをすれば必ず子を授かると聞いた夫は、嫁を残して旅立つことにした。見送りについて来た嫁と森の近くで弁当を食べ、ひょうたんの水で水杯を交わして、二人は南と北へ別れた。帰るはずの日を過ぎても夫は戻らず、嫁は毎日その森へ通っては南の空に向かい、早い帰りを伊勢の神に祈った。やがて夫は帰り、二人はその森で再会できた。ほどなく男の子が生まれ、夫婦はご利益に感謝して森に小さな祠を建てた。以来そこはお伊勢の森と呼ばれ、村人も参るようになったという。
原典より
ほの後、ほの森を「お伊勢の森」って呼ばって、村の者もみんなお参りするようになったんだど。—— 氏家町史 民俗編――伝説・昔話(氏家町(編)・氏家町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
氏家町史 民俗編――伝説・昔話(氏家町(編)・氏家町史)
『氏家町史 民俗編――伝説・昔話』は、氏家町の町史民俗編のうち、第五章「くらしと言語」の第一節「伝説・昔話」と第二節「ことわざ、俗言」の初めを収めたものである。昭和七年版『氏家郷土誌』の数編と町史編さん室などが集めた話から選んだ二十七話を土地の方言の語りに直して載せ、勝山城にまつわる歴史伝説や地蔵の信仰伝説が多い。各話の末に方言を主とする語注を付け、ことわざの節では日常に使われた俗言を頭の音(あ・い・う)ごとに並べる。