与三様
どんな伝承か
少し昔の話。押上に与三というあわて者で臆病な男がいた。隣村へ村使いを言いつかったが、秋祭りを過ぎたころで日は羽黒山にかかっていた。隣の伝八じいさんが、暗くなると夜盗打ちが出るから急がないと斬られるぞと言ったので、与三は嫌がりながら出かけた。村の入口まで来たとき、いきなり頭を打たれた。頭を押さえると指の間からぬらぬらしたものがつき血だらけだったので、夜盗に斬られたと思い、六尺褌を外して頭に巻き、人殺しだと怒鳴りながら家へ駆け込んだ。村医者の源庵のもとへ担ぎ込み、巻いた布をはがして洗うと大きな柿の種が出てきた。熟柿が落ちたのだと皆で笑い、以後その柿の木を与三様と呼ぶようになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
氏家町史 民俗編――伝説・昔話(氏家町(編)・氏家町史)
『氏家町史 民俗編――伝説・昔話』は、氏家町の町史民俗編のうち、第五章「くらしと言語」の第一節「伝説・昔話」と第二節「ことわざ、俗言」の初めを収めたものである。昭和七年版『氏家郷土誌』の数編と町史編さん室などが集めた話から選んだ二十七話を土地の方言の語りに直して載せ、勝山城にまつわる歴史伝説や地蔵の信仰伝説が多い。各話の末に方言の語注を付け、ことわざの節では日常に使われた俗言を五十音順に並べる。