娘を食うオロチを酒で退治した由来
どんな伝承か
下大槻の天王はん(健速神社)の祭りの前は、昔は大騒ぎだった。名主が大槻中の十九歳の娘を集め、いちばん器量のよい娘を神に納めるならわしで、その年も一人が決まり、家では親兄弟が今生の別れを惜しんで泣いていた。通りかかった天王はんは訳を聞き、大蛇のしわざだと見抜くと、村中に触れを出して八つの大樽を集め、酒を満たさせた。夜更け、火を吹く大蛇が地鳴りとともに現れる。大蛇は大好物の酒を八樽とも飲み干して眠り込み、樽陰で待っていた天王はんが大刀で切りかかった。八つの頭の心が一つにならぬ大蛇はついに退治され、何の手助けもできなかった村人は恥じて、毎年の祭りにヤマタのオロチの神楽を奉納すると約束したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秦野市史 別巻 民俗編――伝説・妖怪(秦野市(編)・秦野市史)
『秦野市史 別巻 民俗編――伝説・妖怪』は、神奈川県秦野市の市史のうち、民俗編の口承の部分を収めたものである。前半には市内で聞き取った動物・神仏・妖怪・人や村に関する話を地区名とともに載せ、河童やセンタク婆さん、グアン婆さんなどの妖怪譚を含む。後半の第四節「伝説」は一テーマ一話の方針で百話を採り、動物・植物、水、石・岩、山・坂・道・畑、塚、祠堂、家・村の七つに分け、既刊の類話を〔文献〕として要約して添える。